手のひらにややこしい事情を持っていると何かと厄介な事がたくさん起こります。
例えば私が子供の頃に憧れていた習い事はピアノとバレエ。
バレエに関しては手のひらの汗とは全く関係がありませんが、近くにバレエを習える教室がなく断念。もう一つの憧れであったピアノ教室へ通うことになりました。
とはいえ、憧れのピアノも最初はつまらない練習ばかり。それは当然のことなのですが・・・
早く曲が弾きたい~と思っても、来る日も来る日も単純な指の動きの練習ばかり。
それでも、いつかショパン(また大きく出ましたが)を弾ける日が来る日を夢見て、毎日練習していました。
ところがある日、ピアノを弾く上でとても重大な事に気付いたのです。
それは・・・手のひらの汗で鍵盤が滑ること。
鍵盤が真っ黒に
指の動きからもう少し先に進み、ちょっとした曲を弾かせてもらえるようになった程度ではありましたが、それでもやはり支障があります。
そして、実は私はこれが一番自分で嫌だったのですが、私が弾き終わった後の鍵盤は汗でぐっしょり濡れていること。
しかも真っ白な鍵盤には、手の汗と汚れが一緒になった灰色っぽいような黒っぽいような汚れが残るのです。
汚れがまだ濡れているうちはいいのですが、うっかり乾いてしまってからだとからぶきした位では落ちません。
今でこそ、常にタオルハンカチを携帯し、自分が触れたところは誰かに気づかれる前にさっと拭いてしまうことができますが、私も当時はまだまだ手の汗とともに生きて数年のこと。
そこまで気づけませんでした。
誰かにそのことを指摘されたわけではないけれど、それがとても気になって気になって仕方なくなり、いつしかピアノに触れるのも嫌になってしまったのです。
なんていうのでしょう・・・真っ白な鍵盤を自分の指が汚してしる、という感覚。
どうしようもなく悪いことをしているのだというあの罪悪感。
今でもピアノを見ると寂しい気持ちになります。
経験、知恵。
手のひらの大量の汗とともに生きてきた自分だからこそ、その時の自分にそれがあったら・・・と思う瞬間です。