日本人の食卓には欠かせない味噌汁。具をたくさん入れた味噌汁があれば、あとは炊き立てのご飯と漬物だけで立派な献立ができあがります。
しかし、一汁一菜は日本人の食の柱でもありますがその反面、おかずと汁物の役目をになう肝心の味噌汁が美味しくなければ一汁一菜で満足できる食事とはなりません。
味噌汁を美味しく作るにはダシも大切ですが、なんといっても主役は味噌!今や味噌は買うのが当たり前の時代で、手作りするなんて昔のことと思っている方も多いかもしれません。
でも手作り味噌って意外に簡単に作れるんです!今年はぜひ味噌を手作りして、「我が家の自慢の味」にしてみませんか?
手作り味噌の作り方
味噌を手作りするのは難しいことなのでは?と思われるかもしれません。でも実際に味噌を作ってみると、あっけないほど簡単なんです。味噌作りのポイントはたった3つ。
「茹でる・つぶす・仕込む」
また今は核家族も多く、住まいの事情もあるためたくさんの味噌を仕込むというわけにもいきません。まずは少量から仕込み、様子を見ながら増やしていくのも良いでしょう。
今回紹介するのは、初めてでも作りやすい味噌の分量です。
【味噌の材料約4kg分】
大豆 1kg
米こうじ 1kg
塩(塩分約12.5%) 430g
種水用の塩 43g
種みそ 250g
アルコール(※) 大さじ2~3
※焼酎やホワイトリカーなどアルコール35度以上のもの【準備するもの】
・みそかめまたはホーローポット(6L前後のもの)
・鍋またはボウル、ざる(直径30cm前後)
・大きめの鍋(直径30cm前後)
・マッシャーやフードプロセッサー(大豆をつぶすときに使用)
・ラップ
・重石用の塩(800g。ポリ袋に入れて使用)
・新聞紙とひも(保管の際にかめを覆う)
作り方
①【下準備 大豆を戻す】
味噌を仕込む前の晩に大豆を洗い、大豆の3~4倍以上の水にひと晩(約12時間)浸す。
②鍋に大豆と新しい水(大豆の2倍の量)を入れ、3~5時間煮る。途中アクをとり、湯を足しながら、指先でつぶせるくらいのやわらかさに煮る。圧力鍋の場合は、お手持ちの圧力鍋の説明書に従って柔らかくなるまで煮る。
③熱いうちにざるにあげ、煮汁をきる。このとき、煮汁を全部捨てずに種水用として300ml取りおき、熱いうちに種水用の塩43gを加え、種水を作る。
④熱湯消毒したボウルに③の大豆を入れ、熱いうちにマッシャーなどでペースト状につぶす。冷めるととつぶれにくくなるので手早く行う。
⑤消毒のためアルコールをふきんか脱脂綿などに含ませ、容器の内側をふく(その前に熱湯消毒をしておくとなお良し)。次に、容器の底に塩(1~2つまみ・分量外)をまんべんなくふり入れる。
⑥鍋(またはボウル)に、米こうじと塩430gを入れ、両手で下からすくい上げながら、すり合わせるようにしてよく混ぜる。
⑦⑥の鍋に④でつぶした大豆、種みそを入れて、よく混ぜ合わせる。こうじをつぶさないように注意。
⑧⑦をおにぎり大に丸め、だんご状の味噌玉にする。
その味噌玉を容器に3~4個ずつ詰めて上から手のひらや甲で押してしっかり空気を抜く(容器にたたきつけるようにして入れても良い)。
これを繰り返し、最後は表面を平らにして、ふり塩(1~2つまみ程度・分量外)をする。
⑨容器の内側と縁をアルコールできれいにふき、みその表面が空気にふれないようにラップをはりつけ、重さが均一にかかるよう重石をする。
※重石には大きめのポリ袋に塩を入れた塩袋を使うのがおすすめ。重さが均等にかけられるうえ、塩は腐敗しないので、破れてこぼれたりしても大丈夫。
⑩容器を新聞紙などで覆い、ひもでしばる。直射日光の当たらない涼しい場所におく。湿度や温度の高い場所は避け、熟成させる。
書いてみると工程が多いように感じますが、やっていることは簡単なことばかりだから大丈夫!終わってみると物足りなさを感じるかもしれませんよ。
手作り味噌を作るさいの注意点
以上のように、手作り味噌を仕込むのは想像していたよりもかなり簡単なのですが、これまで味噌作りをしてきてわかったいくつかの注意点があります。それを挙げてみます。
容器の消毒をしっかりと
味噌を仕込んだ後、1年近く寝かせて熟成させるので、カビが発生しないようにとにかく消毒をしっかりしなければなりません。逆に言えば消毒さえキチンとしていたら、味噌作りの半分は終わったようなもの!
材料でも紹介しましたが、アルコール35度以上の焼酎やホワイトリカーなどでしっかりと消毒をしましょう。作業に入る前に手を洗い、指輪をしていたら外して。
たったこれだけのことを面倒臭がり、家にあった焼酎で適当に消毒して何度カビに悩まされたことか!でもホワイトリカーを使ってからというもの、一度もカビが発生していません。
1度買っておけば保存も効くし、味噌作りだけではなく梅干し作りのさいの消毒にも使えるので便利ですよ。
大豆は柔らかくなるまでしっかり茹でる
1晩水に漬けた大豆は、水を吸収し簡単に2倍の大きさに膨らみます。しかし、これをゆでるとなると案外時間がかかるのです。
ただコンロにかけて煮ていればいいだけなのでたいした手間はかかりませんが、3~5時間を要します。一度ストーブの上でコトコトと煮たことがありましたが、あまりに時間がかかったため途中から圧力鍋に変更したほど。
以来、鍋でゆっくり煮るのは諦めて圧力鍋を使っています。味噌作りは圧力鍋が断然便利!時間もかなり短縮することが出来ます。
私が愛用しているのは平和の圧力鍋。もう20年使っていますが丈夫で故障知らずです。
まだ子供が小さい頃に自然食ショップで購入したのですが、サイズ選びで悩みました。しかし店員さんの「大は小を兼ねる」の一言でこの6リットルタイプを購入。
これが結果大正解で、今でも玄米を炊くだけでなく、さまざまな料理に愛用しています。
※圧力鍋で煮る場合は、圧を抜くところに大豆の皮などが詰まると危険なので要注意。
手作り味噌を仕込む時期
味噌を仕込む時期は、昔から1月から3月くらいまでの冬季の間でした。しかし意外なことですが、味噌は1年中いつでも仕込めるのです!
ただ、やはり美味しい味噌が仕込めるのは「寒仕込み」と呼ばれる時期。ではなぜこの時期に味噌作りが集中するのでしょうか?
発酵の速度が緩やか
味噌作りはたいした手間はかからないものの、時間をかけてゆっくりと発酵させることが重要な過程となります。
発酵が進みやすい暑い季節に味噌を仕込むと、暖かさで一気に発酵が進み味に影響を与えてしまうのです。
寒い時期に仕込むことで、じっくりと発酵が進み、味噌の味が深まるのです。
味噌の材料が新鮮
手作り味噌の材料となる米麹や大豆は秋に収穫されます。その収穫したばかりの材料を使うことが味噌の美味しさにもつながります。
雑菌の少なさ
味噌作りは何度も書いているようにカビ対策が重要です。暑い時期に味噌を仕込んだ場合、雑菌が繁殖して味噌に悪影響を及ぼすことも考えられます。
その点、雑菌の繁殖が少ない冬に仕込むことで、繁殖を極力抑えられます。
手作り味噌に適した容器
味噌を手作りするには、出来上がった味噌を1年近く保存しておける容器が必要になります。では味噌を保存するにはどんな容器がよいのでしょうか。
結論から言ってしまえば、かめ・ホーロー容器が理想です。その理由を説明します。
プラスチック容器で保存
プラスチックの容器は安価で軽く、扱いやすいのが特徴です。またたくさんの量を仕込む場合、容器代が安く抑えられます。
しかしプラスチックの容器には、かめやホーロー容器に比べて断熱性がなく、味噌が変色してしまう可能性もあります。
さらには、「強い塩分で容器が溶け(?)異臭がする」という報告も。せっかく手作りした味噌、異臭がするものを口にするのは悲しいですよね。
熟成期間や保存期間が短く、異臭がする前に食べきってしまう量であれば問題ないかもしれません。
ビニール袋
これは私の経験ですが、以前ビニール袋で味噌を仕込んだことがあります。しかもその年に限ってかなりの量を仕込みました。
でも悲しいことに、半年ほどすると異臭がするようになってしまい、どうにも食べられたものではありませんでした・・・
この場合、仕込むさいの消毒が足りなかったのか、それともそもそもビニール袋が悪かったのか、未だに原因はわかっていません。
仕込んでからもう5年くらいたつでしょうか。もちろん捨てられず今も床下収納に保存してあります。しかしここのところ強い異臭が少しだけ和らいできています。
もしかしたらもう少し経ったらニオイが消えて食べられるかも!?と内心喜んでいます。
が、こんな風に5年後に食べられるようになるよりも、1年熟成させて美味しく食べられる方が良いに決まっていますよね。
ジップロック
ジップロックはビニールも比較的しっかりしており、少量の梅干しを漬けるのにも利用されるようになりましたね。同じように味噌も家族構成が少ない家庭にはいいかもしれません。
また、保管場所のないアパート等で味噌を仕込むのには手軽だと思います。
私は味噌をジップロックで熟成させたことはありませんが、少ない量を仕込んだり、試しに少量を作ってみるという方にはいいのかもしれませんね。
ガラス容器
プラスチック素材に比べ、ガラスの容器は消毒もしやすく耐久性もあり、梅干し作りや梅酒作りにも使われています。だから味噌作りにも向いていると言えるでしょう。
木桶
味噌の保存容器と言えば、昔は木桶でしたよね。
なぜ木桶が味噌の保存に適しているのかと言えば、桶に菌が住み着き、その家独自の味噌が育つということ。
また、仕込んだ味噌に木の香りが移り、独特の風味を醸し出すといいます。
しかし今の時代では保存場所の確保も難しく、しかもメンテナンスも欠かせないよう(タガの調整など)。その職人さんも今では少なくなり、何かと手間がかかるようです。
味噌かめ
味噌かめは陶器でできており、メンテナンスは不要で劣化もなく、半永久的に使うことが出来ます。味噌仕込みだけでなく梅干しや漬物作りにも最適です。
しかし陶器の容器だけでも重量があるため、そこに味噌を仕込んだ場合、移動するのも一苦労となります。また衝撃で破損することもあり、取り扱いに注意が必要です。
琺瑯(ホーロー)
味噌作りに一番向いているのが、かめとこのホーローだと思います。その理由は、内容物を変化させない・清潔に保てる・酸や塩に強いなどが挙げられます。
値段はプラスチックに比べて張りますが、かめに比べると軽く扱いやすいし、なにより長期間使い続けることが可能です。
私が梅干し作りのさいに使っているホーロー容器は、かれこれ15年近く使っているもの。これだけ長い間使えると思うと、決して高くはないのかもしれません。
手作り味噌を保存しておく容器の大きさ
手作りした味噌を熟成させるための容器は、好みや生活スタイルによって変わることがわかりました。では選んだ容器の大きさはどれくらいが適当なのでしょうか。
中には1年分の味噌を仕込む家庭もあるでしょうが、現代においては減少傾向にあるでしょう。作りやすく保存しやすい大きさを求めた方が扱いやすいと思います。
私はいつも仕上がり量が4キロほどになる分量で作っています。手作り味噌のレシピに書いてあるように、大豆1キロ・米麹1キロというのも扱いやすい分量です。
その量の味噌を入れて熟成させておくには、6リットル程度の量が入る容器が良いでしょう。容器の種類は前項に書いた通りお好みでどうぞ。
手作り味噌に関するQ&A
食べごろはいつ?
味噌が食べられるようになるのは、仕込んでからおよそ6カ月後から。梅雨明けに容器を開けてみて、たまり(※)が上がっていれば食べることができます。
さらに「天地返し」をして10月頃までおくと香りもよく、味もより美味しくなります。
※味噌からしみ出る液体のこと。もし上がっていたら、味噌に混ぜる。
カビが生えたらどうすればいい?
手作り味噌に必要な材料は、大豆・麹・塩の3つ。この中の塩は防腐剤の役割もしていますが、それでも細菌が繁殖してカビが出ることがあります。
もし自家製味噌にカビが発生したら、その部分を取り除けば大丈夫!取り除いた味噌は食べられるのでご安心を。
カビの発生を防ぎたいのなら対策は2つ。
・味噌の表面を密封すること
・重しをすること
私は作り終わった味噌の表面にピッタリとラップをして覆っています。和紙などを使っても良いようですよ。
それから重しですが、重しをすることでさらに表面が密閉されカビが発生しにくくなるのだそう。私は塩をビニール袋に入れて重し代わりにしています。
しょっぱい(塩辛い)原因は?
出来上がった味噌が塩辛いと感じる方もいるようです。原因はいくつか考えられます。
まず、先ほども書いた通り塩は防カビの役目をするため、カビが生えないように塩の量を多くしてしまったのかもしれません。
また手作り味噌を仕込んだ後、「ふり塩」をするのですが、その量が多過ぎたのかもしれませんね。
さらに、熟成期間が短いと塩の角がとれないこともあるので、もう少し熟成させて様子をみるのもいいかもしれません。
手作り味噌の賞味期限は?
味噌は保存食なので、長期間保存していても腐ることはありません。が、風味は段々落ちてきます。
また変色することも考えられるので、1年を目安に食べきった方が美味しくいただけるでしょう。
手作り味噌を作るとこんなメリットもある(かも)
とにかく褒められます(笑)! 無条件で褒められること間違いなし!です。
私は保存食を作るのが好きで、味噌の他に梅干しやらっきょう、なめこやピクルスなどをよく作るのですが、ダントツで褒められるのは手作り味噌。
やはり味噌作りは大変と思っている方が多いからなのでしょうね。料理好きなお姑さんにも驚かれた&褒められたほどです。
また、以前我が家に息子の友達の留学生(イギリス人)が遊びに来てくれたことがありました。そのさい味噌汁を出したところとても喜ばれました。
味噌も手作りしたというとさらに喜んでくれ、そのあと日本の伝統食の話題で盛り上がったのは言うまでもありません。
これはよくあるシチュエーションではないでしょうが、日本の文化を紹介するさいには大いに役立つ話題でしょう。
しかし、味噌を手作りするというのは他の人(特に男性)からすると、かなり女子力が高いと思われるのではないでしょうか?
「料理するのが好きです。得意料理は手作り味噌を使ったお味噌汁です」
な~んて言ったら男性のあなたを見る目が変わるかも!?
最後に
いかがでしたか?味噌を手作りするって案外簡単ですよね。今年はぜひ、手作り味噌にチャレンジし、「うちの味噌」を作ってみませんか?